Pretty Arrow、予算管理スプレッドシートを29,000本。姉妹2人のEtsy店が月商$10,417になるまで
燃え尽きで退職したEmily McDermottが2021年1月に開始。売れない印刷物からEtsyのキーワード調査を経てスプレッドシートに切り替えたのが転機で、2年半で29,000本超を売り月商$10,417に達した。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
家計簿のテンプレートで、月に156万円
Emily McDermottがPretty Arrowを始めたのは2021年1月である。その数ヶ月前、彼女は燃え尽きからの回復を理由にフルタイムの仕事を辞めていた。手元にあったのは、自分自身が3万ドル超の学生ローンを家計管理で返し切ったという経験と、30歳になる前にオンラインの事業を持ちたいという期限だけだった。
取材時点で、Pretty Arrowの月商は$10,417。売っているのはGoogleスプレッドシートとExcelの予算管理テンプレートで、開始からの累計販売本数は29,000本以上。従業員は本人と姉妹のLena(オペレーション担当)の2名だけである。
この事例で見るべきなのは月商の大きさではない。最初に作った商品がほとんど売れなかった状態から、何を変えて売れる側に回ったのかという一点にある。
数字を並べる
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 開始 | 2021年1月 |
| 月商 | $10,417 |
| 累計販売数 | 29,000本以上のスプレッドシート |
| 価格帯 | バンドルで**$17〜$27** |
| 体制 | 2名(本人+姉妹Lena) |
| 販売チャネル | Etsy、Shopify、Facebook/Instagram広告 |
| 広告のROAS | 2〜3倍 |
| 目標CVR | デジタル商品として2%以上 |
| 現在までの期間 | 約2年半 |
最初の商品は、ほとんど動かなかった
Pretty Arrowの一発目の商品は、Canvaで作った50ページ超の印刷物(プリンタブル)だった。家計管理のワークシートを紙で束ねたもので、発想としては自然である。自分が実際にやってきた方法をそのまま形にした商品だからだ。
だが、売れ行きは鈍かった。ここで彼女が取った行動が、その後の2年半を決めている。
潮目が変わったのは、作る前に棚を見に行った時だ
McDermottはEtsyのキーワード調査を覚えた。eRankというツールを使い、競合が少なく需要のあるロングテールのキーワードを探す作業である。そこで分かったのが、プリンタブルよりもスプレッドシートのほうが検索需要が大きく、かつ競合が少ないという事実だった。
彼女はGoogleスプレッドシートの使い方をYouTubeのチュートリアルで学び、数週間のうちに最初のスプレッドシート商品を出した。以降、この商品カテゴリだけで2年半に29,000本以上が売れている。本人は最初の売上について「初日に最初の売上が立ったのを覚えている」と振り返っている。
転機を一行で言えば、「作ってから売り先を探す」から「売れている棚を見てから作る」へ順序を反転させたことである。商品そのもののクオリティを上げたのでも、広告費を突っ込んだのでもない。同じ知識(家計管理)を、需要が実証されているフォーマットに載せ替えただけだ。
伸びた理由を分解する
順序の反転が効いたのは、それ単体の話ではなく、その後に置かれた仕組みと噛み合ったからである。
買う気の人が既に検索している場所に置いた。 Etsyは「予算管理 スプレッドシート」と打ち込む人が、財布を開いた状態で来る棚である。ここでの勝負は認知を作ることではなく、検索語と商品名を一致させることに縮む。eRankでの調査は、その一致を作るための作業だった。
客を1グループに絞った。 ターゲットは借金返済と家計管理をしたい若い女性である。McDermott本人の助言は「あなたの商品を、ある1つのグループにとって考えるまでもない買い物にすること。全員を同時に狙って効かせることはできない」という趣旨のものだ。ここは彼女自身の3万ドル返済という経歴と重なっており、商品説明が説得力を持つ土台になっている。
機能ではなく見た目とブランドに寄せた。 彼女が優先したのは高度な表計算機能ではなく、使いやすいデザインとブランドである。デザインをA/Bテストして、コンバージョンの高いものを見つけてから拡大している。買い手が欲しいのは関数ではなく「続けられそうな家計簿」だ、という読みである。
Etsyの客を、自分のリストに連れ帰った。 ここがこの事例の一番構造的な部分だと言える。彼女は無料の予算リソース集をリードマグネットにし、それをショップのバナー、商品画像、商品説明、そして販売したスプレッドシートの中にまで置いた。Etsyは顧客リストを事業者に渡さないプラットフォームだが、商品の内側に導線を仕込めば、購入者はメールリストに移ってくる。彼女はメールリスト(ConvertKit)を「事業の背骨」と表現し、販促メールの前に価値のあるメールを3〜5通送るという運用をしている。
広告は商品ではなくリードマグネットに当てた。 Facebook/Instagram広告の着地点は無料登録で、そこから$17〜$27のバンドルを提示する。この設計で2〜3倍のROASが出ている。単品を直接広告で売るより、一度リストに入れてからバンドルを見せるほうが客単価が取れる、という順番だ。
本人が挙げる最大の失敗
McDermottが最初の頃の大きな誤りとして挙げているのは、「専業として食べていくには大量のスプレッドシートを作る必要がある」と思い込んでいたことである。実際に効いたのは商品数の増加ではなく、既に売れている商品をどう売るかの側だった。彼女は有料広告を早い段階で回すことの効果を過小評価していたとも述べており、今後の方向性も新商品の量産ではなく、コンバージョンの高い既存商品のマーケティングとブログのSEO強化に置いている。
何が真似でき、何が真似できないか
真似できるのは、順序と仕掛けの部分である。制作の前にキーワード調査で需要を確かめる。買い手を1グループに絞る。リードマグネットを商品の内側にまで置いてプラットフォームの客を自分のリストに移す。広告は商品ではなく無料オファーに当てる。ここまではジャンルを問わず移植できる。
真似できないものも明確だ。3万ドルの学生ローンを自力で返したという経歴は、後から用意できない信頼の源である。2021年前後のデジタルテンプレート需要という市場環境も選べない。そして、燃え尽きで退職した後に無収入で試行錯誤できる数ヶ月を持てたことも、誰にでもある条件ではない。
数字の読み方にも注意がいる。$10,417は月商であって利益ではない。Etsyの手数料と広告費が引かれた後に何が残るかは開示されていない。加えて、スプレッドシートという商品は複製と模倣が容易で、Etsyの検索アルゴリズムが変わればトラフィックは一夜で動く。彼女がメールリストを「背骨」と呼ぶのは、おそらくその脆さを自覚しているからだろう。
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出典
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