コラム
個々の事例だけでは見えないものがある。掲載している事例を横断して集計すると、事業売却の倍率の相場、一人で到達できる月商の分布、AI事業がいまどこまで来ているかといった「面」が見えてくる。ここではその分析と、副業・ソロプレナー市場の変化についての見立てを置いている。
数字はすべて、出典付きで掲載している事例の集計値か、明記した公開情報にもとづく。推奨や助言ではない。
本を表示中(全23本)
解約率を公開した10件を並べた。月3%と月10%で、売上の天井は3倍以上違う
解約率の実数を公開している掲載事例は431件中10件しかなく、同じ物差しで比べられるのは5件だった。幅は月3%未満から月10%未満で、天井の倍率に直すと33倍と10倍になる。下げた3件がやったのは製品改良ではなく、解約を決める回数を減らすことだった。
ちいかわ、興収168.5億円までの12年。出発点は誰でも並べられる棚だった
2026年の年間興行収入1位は、Xに載った4コマから始まったちいかわで、公開66日の興収は168.5億円だった。出発点は2014年にLINEが開いた、誰でも並べられる棚である。12年を年表にすると、作者本人が公開した金額は1つも出てこない。
アフィリエイトの1PVは0.1円から417円まで。掲載33件を並べたら、単価を決めていたのは書き手ではなかった
成果報酬(アフィリエイト)を主な収益源にする掲載事例33件(国内20・海外13)を数えた。月商とPVが両方あるものでは、1PVあたり収益は0.1円から417円まで4,000倍の幅があり、中央値は約4円。差を作っていたのは記事の質ではなく広告主の獲得単価だった。9件が5割以上の下落を記録している。
AdSenseは1,000PVで386円。ラッコM&Aで売れたブログ225件から、PVと収益の距離を測った
ラッコM&Aで成約済みのAdSense収益ブログ240件を数えた。PVと売上が両方ある225件で、1,000PVあたり売上の中央値は386円、半分が200〜800円に収まる。30万PVを超えると単価は下がり、100万PV以上では179円。掲載価格(売主の希望売却価格)は月間売上の19ヶ月分だった。
運営記録⑥|月間3.3万人。伸びの44%を、10月の値上げを扱った2本が運んだ
運営記録⑤から5週間。金融関係の情報サイトの直近30日アクティブユーザーは33,244人(前の30日は16,758人)、検索クリックは28日間で4,088。伸びの44%は10月の値上げを扱った2本が運び、1本が全体の20%を占めた。韓国語版が英語版を抜いた続報も書く。
月商100万円に、半年と13か月と14年で着いた3人 — 速い人ほど現場を離れられない
公開中の385件から、月商をちょうど100万円として記録している事例を抜くと7件あった。全て日本、全て一人か副業。期間が分かるものだけでも、到達までに半年しかかかっていない事例と14年かかった事例が並ぶ。速く着いた人ほど、その事業から自分を抜けなくなっていた。
オウンドメディアの成功事例5選。月100万円のブログから$5.8M売却まで、3つの型に分かれた
自前のメディアを集客の中心装置にして実数を公開している掲載事例から5件を選んだ。副業ブログの月100万円、購読7.5万人で年商$900Kのニュースレター、LP10枚でMRR $62KのSaaS、リスト30万人の講座、$5.8Mで売れた比較サイト。5件は「オウンドメディア」という同じ言葉の下で、3つの別の商売をしている。
閉鎖11事例の死因を数えた。資金切れより多いのは、プラットフォームと「黒字なのに続かない」
掲載事例のうち status: closed(閉鎖・撤退)は11件。死因を分類すると、資金切れ型は少数で、プラットフォーム・規約起因が3件、黒字や高収益のまま畳んだものが3件ある。運営期間は4ヶ月から10年まで。失敗事例の少なさ自体が生存者バイアスであることも含めて整理した。
「社員はAIだけ」はどこまで本当か — ソロ×AI26件、月商の中央値は150万円
「AI社員だけの一人会社」という言説を、掲載事例で検算した。一人または副業でAI事業を運営する26件のうち、月商公開20件の中央値は150万円。全ソロ・副業の中央値(約90万円)より高いが、桁は変わらない。そしてAIが肩代わりしているのは開発とサポートで、配布と決断は最後まで人間の仕事だった。
月商の中央値は日本25万円、海外450万円。18倍を分けているのは国境ではなかった
掲載346事例を日本135件・海外211件に分けると、運営中の月商中央値は25万円と450万円で18倍、売却額の中央値は200万円と1.3億円で65倍離れていた。これを「実力の差」と読むのは早い。両者は分布の欠け方そのものが違う。
口コミ750万円、マーケットプレイス26万円。集客チャネル別に月商の中央値を並べた
月商を公開している収載事例235件を、主要な集客チャネル別に集計した。中央値が最も高いのは口コミ・紹介の750万円、最も低いのはマーケットプレイス経由の26万円で、約29倍の開きがある。読む順番は逆で、事業の型がチャネルを選んだ結果がこの差になっている。
menuの終了発表に、数字は1つも無い。買収は事業ではなく清算のためだった
KDDIは2026年8月19日、フードデリバリー「menu」を9月30日で終了し会社を解散・清算すると発表した。8月31日に完全子会社化してから畳む構造、2023年でピークアウトした市場、赤字を拡大させている生存者の決算を並べて読む。
売却額は月商の何ヶ月分か — 公開20件の中央値は25ヶ月、日本7.8に対し海外29.3
売却額と月商の両方が公開されている成約20件で「月商の何ヶ月分で売れたか」を集計した。中央値は約25ヶ月。ただし日本の中央値は7.8ヶ月、海外は29.3ヶ月と4倍近く離れている。倍率を動かしているのは国境ではなく、収益の再現性だった。
運営記録⑤|月間1.1万人。上位6%が全体の63%を運んでいた夏の実測
運営記録④で報告した情報サイトの続報。直近30日のアクティブユーザーは11,136人(前の30日は1,971人)、検索クリックは28日間で122→1,432。7月に行った「上位8本=全体の6%がトラフィックの63%」という分析を、7か条のネタ選定ルールに固定した結果を実測で振り返る。
売却167件のルートを数えると、6割超は仲介を通さない直接取引だった
掲載中の売却事例167件の成約ルートを集計すると、6割超が仲介を通さない直接取引だった。プラットフォーム経由はバトンズ27件、トランビ9件、ラッコM&A8件。ルートごとに買い手の顔ぶれと価格の決まり方が変わる。
運営記録①|4つ始めて、3つ壊れた。編集部が自分の事業の数字を出す理由
他人の数字ばかり扱ってきたメディアが、自分の数字を出す連載。2024年から2026年にかけて4つの事業を始め、3つが止まった。コミット数・稼働日数・止まった日付を並べ、何が違ったのかを4回に分けて記録する。
運営記録②|出資も対談も順調だった2人のSaaSは、資本の配分で壊れた
新卒同期と2人で始めたBtoB SaaS。VCとエンジェルから出資を受け、BIG4との対談も大手との事業提携も決まり、外形は順調だった。壊れたのは資本の配分で、代表に持分を寄せる調達側の要請と求められる貢献量の差が、不公平感として積み上がった。
運営記録③|277コミットと17言語を積んで、アプリ2本は静かに止まった
同じ月に始めたモバイルアプリ2本の停止記録。片方は51日で277コミット・17言語まで作り込み、片方は17日で全面的に作り直して公開した。どちらも需要を確かめる工程を挟まないまま、コミットが来なくなって止まった。
運営記録④|記事226本で月間9,103人。流入が立ち上がるまで6週間の時差があった
2026年5月15日に始めた情報サイトの実数。記事を226本出し、直近30日のアクティブユーザーは9,103人(前の30日は1,457人)。記事を最も多く投入した週と、流入が立ち上がった週の間には約6週間の時差があった。
2026年、AI事業で成立している型は驚くほど地味だ。勝っているのは高額な人的サービスの置き換え
ブームの初速だけで終わった事例と、畳んだ事例が同じ数だけ記録されている。生成AIを中核に使った掲載事例を横断すると、成立していたのは「AIそのもの」ではなく、既存の高額な人的サービスの置き換えに集中していた。
事業の種類で月商は50倍ひらく — 12分類の中央値マップ
運営中の事例を事業種別ごとに集計すると、月商の中央値はSaaSの約900万円からYouTubeの約17万円まで50倍以上の開きがあった。ただし件数と単価構造を見ると、この差は「稼げる分野」の差ではない。
一人でどこまで行けるのか。ソロ・副業121件の月商中央値は90万円、天井を決めるのは労働時間ではない
一人または副業で運営されている事例のうち、月商が公開されている121件を集計。中央値は月90万円、最大は月1.75億円。桁の差を生んでいるのは労働時間ではなく、収益が労働から切り離されているかどうかだった。
事業売却の相場は、1つの数字にならない。公開37件の中央値は3,000万円、上位25%は6億円超
最小は120万円、最大は48億円。掲載中の売却事例168件のうち金額が公開されている37件を並べると、下位25%が300万円、上位25%が6億円超という形になる。桁が違う世界が同じ「事業売却」という言葉で語られている。