ゲーム13本で累計700円。初振込8,000円に届くまでの4年間
38歳・未経験からUnityを学び、約4年で13本のゲームをリリース。それでも累計収益は700円ほどだった。転機は2024年7月、2作目RPGにバナー広告を載せたこと。1日100〜200円が2ヶ月続き、Google Playの振込基準8,000円を初めて超えた。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
個人開発の収益報告は、うまくいった月から語られることが多い。この事例はその逆で、4年近く「ほぼゼロ」だった期間が主役である。まるこバレランド氏は元ブルーカラーの会社員で、38歳・未経験からゲーム制作を始め、40歳で個人ゲーム開発者として独立した。そして2024年11月、「ゲーム制作で1万円を稼ぐまでの軌跡」という記事で、初めてGoogle Playからの振込を受け取るまでの全期間を金額つきで公開した。
金額の桁が小さいからこそ、何が収益を生み、何が生まなかったのかがきれいに分離して見える事例である。
4年間の収益タイムライン
| 時期 | 出来事 | 収益 |
|---|---|---|
| 2020年4月末 | Unityの独学を開始 | — |
| 2020年12月末 | Google Playに初リリース | なし |
| 2021年3月 | AdMob広告を載せた最初の作品をリリース | 10円以下 |
| 2021年5月〜2022年6月 | ミニゲーム7本をリリース | 計200円ほど |
| 2022年7月〜2023年4月 | Corgi Engineでアクションゲーム3本(広告なし) | なし |
| (2023年4月時点) | ミニゲームを含め13本をリリース | 累計700円ほど |
| 2023年11月末 | 2D RPG『ストロングクエスト』をリリース(収益化せず) | 0円 |
| 2024年7月 | 2作目RPG『サドンファンタジー』をリリース(バナー広告) | 1日100〜200円 |
| 2024年8〜9月頃 | その水準が2ヶ月続き、振込基準8,000円を突破 | 初振込 |
学習開始から初振込まで、約4年4ヶ月。13本を出した時点での累計収益700円は、1本あたり平均54円に相当する。
何を作り、何を作らなかったか
制作の中身は、大きく三期に分かれる。
第一期は2021年からのミニゲーム量産期で、7本を約1年かけて出している。この期間の収益合計が200円ほど。第二期は2022年7月からで、有料アセットのCorgi Engineを導入してアクションゲームを3本制作した。ここで注目すべきは、この3本には広告が入っていない点である。制作の難易度は上がったのに、収益が発生する経路そのものが存在しなかった。
第三期がオリジナルRPGだ。2023年5月から半年以上かけて制作した『ストロングクエスト』は同年11月末にリリースされ、Google PlayとApp Storeの合計で4,500ダウンロード以上に到達している。ミニゲーム7本の合計を大きく上回る反響である。それでも収益は0円だった。この作品も収益化していないからだ。
つまり2023年末の時点で、この開発者は「作れる」ことと「配れる」ことを証明しながら、「受け取る」仕組みだけを持っていなかった。
潮目が変わったのは、広告への態度を変えたとき
転機は2024年7月、2作目のRPG『サドンファンタジー』をリリースしたときである。本人の言葉によれば、この作品は「バナー広告しか張ってません」という控えめな収益化だ。それでも数字は明確に変わった。
- 平日は1日100円、休日は1日200円
- その水準が2ヶ月続いた
- 結果、Google Playの振込基準である8,000円を突破し、初めての振込が確定した
前後を並べると差は残酷なほどはっきりする。13本・4,500ダウンロードの実績を持つ状態で累計700円。そこにバナー広告を1枚足した1本が、2ヶ月で8,000円を生んだ。作品の量でも品質でもなく、収益化スイッチの有無が金額の桁を決めていた。
本人はこの点をはっきり総括している。稼ぎたいという欲があまりなく「ゲームを作りたいだけの人」だったこと、そして広告がプレイヤーのゲーム体験を妨げることを嫌って広告掲載に消極的だったこと。『ストロングクエスト』から広告を張っていれば、8,000円の突破はもっと早かったはずだ、と。
数字を分解すると何が見えるか
1日100〜200円という日次収益を60日で積むと、6,000円〜12,000円になる。「2ヶ月続いて8,000円を突破」という記述と整合する。逆算すれば、この規模の作品は月あたりおよそ3,000〜6,000円を生む計算になる。月商としては小さいが、ゼロと数千円のあいだには決定的な違いがある。ゼロは何倍しても伸びないが、数千円は本数と単価の両方で積める。
もう一段分解すると、効いた要素は二つに切り分けられる。
一つは、収益が発生する経路を用意したという、ただそれだけの意思決定である。ダウンロードという分母はすでにあった。ミニゲームからRPGまで積み上げた累計の露出は、収益化の有無に関わらず存在していた。そこに広告枠を置いた瞬間に、それまで通過していただけのプレイが金額に変換され始めた。
もう一つは、作品ジャンルの移行である。バナー広告の収益はプレイ画面の表示に比例する。ミニゲームとRPGでは1人あたりの滞在時間の桁が違う。原典に単価や表示回数の記載はないため、ここは事実ではなく解釈にとどまるが、7本のミニゲームの合計が200円で、RPG1本が2ヶ月で8,000円という差の一部は、この滞在時間の違いで説明できる可能性が高い。同じ「広告を張る」でも、張る先の作品によって効き方は変わる。
効かなかったこと、そして残るリスク
この事例には、うまくいかなかった施策も具体的に記録されている。
- 有料アセットを導入して作ったアクションゲーム3本は、広告を載せなかったため収益がゼロのまま終わった。制作コストは上がり、回収経路はなかった
- 4,500ダウンロードを集めた『ストロングクエスト』も収益化しておらず、最大の反響が金額に一切つながっていない
- ミニゲームの量産(7本)は、収益面では合計200円ほどにしかならなかった。本数を増やすこと自体は解決策になっていない
リスクの面も正直に見ておく必要がある。現在の収益はバナー広告に100%依存しており、単価はプラットフォームと広告市場の側が決める。1日100〜200円という水準は、アプリの評価や配信量が変われば簡単に半減する。振込基準を超えたことは節目ではあるが、事業として自立した水準ではない。本人が独立を選んだ後にこの金額であるという事実は、そのまま生活の不安定さを意味する。
何が真似でき、何が真似できないか
再現しやすいのは、収益化の意思決定を前倒しするという一点である。「広告はプレイヤー体験を損なう」という判断は誠実だが、その判断は本来、収益が出てから改めて下すこともできる。バナー1枚から始めて、体験を損ねていると感じたら外す。順序を入れ替えるだけで、この事例の4年間はかなり短縮できたはずだ。原典の著者自身がそう書いている。
滞在時間の長い作品に軸足を移す、という点も再現の余地がある。短時間で終わるコンテンツを量産するより、1人あたりの接触時間が長いものを1本仕上げるほうが、広告型のマネタイズとは相性がよい。
一方で真似できない条件もある。最大のものは、4年近く収益がほぼゼロの状態で作り続けられたことそのものだ。38歳で未経験から始め、途中で有料アセットに投資し、40歳で独立するという判断は、生活基盤と本人の動機に強く依存している。「ゲームを作りたいだけ」という動機は収益化を遅らせた原因であると同時に、ゼロ円の4年を走り切らせた燃料でもあった。この矛盾を切り離して、モチベーションだけ移植することはできない。
もう一つ、ダウンロード数の獲得方法は原典に具体的な記述がない。4,500ダウンロードがどう積み上がったのかが分からない以上、「広告を張れば8,000円になる」とは読めない。分母を作る工程は、この記事の外にある。
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