オフィスも社員もなし。実質2人のShopifyアプリ群がMRR $100,000超・利益率90%に
フリーランスのデザイナーだったErikas Mališauskasは、1本目のShopifyアプリをMRR $6,500まで育てて$250,000で売却。その資金で作ったKaching Appzは月間1.5万インストール、MRR $100,000超、利益率90%を実質2人で回している。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
フリーランスを抜けるために選んだのが「アプリの束」だった
Erikas Mališauskasは、デザイン系のフリーランスとして成功し、自分のエージェンシーまで持っていた。それでも2018年にプロダクト開発へ舵を切っている。受託の外に出るためだ。そこから数年は失敗が続いた。
最初の当たりは2021年、Shopify向けのアイコンアプリだった。MRR $6,500まで伸ばしたところで$250,000で売却。この資金を元手に作った次の一本が、主力のKaching Bundle Quantity Breaksである。現在、Kaching Appzのアプリ群はMRR $100,000超、利益率90%を維持している。オフィスなし、社内の従業員なし、外部エージェンシーへの委託もなし。実働は本人と、4年以上組んでいる開発担当の共同創業者の2人だけだ。
数字とタイムライン
| 時期・項目 | 数値 |
|---|---|
| 2018年 | 受託からプロダクト開発へ転向。以後、複数回の失敗 |
| 2021年 | 1本目(Shopifyアイコンアプリ)がMRR $6,500に到達 |
| 同年 | 同アプリを$250,000で売却 |
| 現在 | Kaching Appz全体でMRR $100,000超 |
| 月間インストール | 約15,000件 |
| 利益率 | 90% |
| 体制 | 共同創業者と2名。オフィス・社員・外注なし |
| 価格 | $14.99 / $29.00 / $59.99 の3段階 |
| 目標 | 2026年までにMRR $1,000,000 |
MRR $100,000を2人で割ると、一人あたりの月間売上は$50,000。利益率90%という数字と合わせると、この事業の実体は「開発とサポート以外にコストの発生する工程がほぼない」構造だとわかる。
潮目が変わった瞬間:無料で配り、ランキングに乗せた
Kachingの立ち上がりは、広告でもプレスでもない。Erikasの説明は身も蓋もない。
ドロップシッピング系のグループでアプリを宣伝しまくった。無料で配った。
Facebook上のドロップシッピングコミュニティへの手作業のアプローチである。無料配布と手売りで初月に1,000ユーザーを獲得し、その勢いがShopifyアプリストア内でのバイラルな伸びに転化した。ゼロから1,000へ、そして現在は月間15,000インストール。この初月の押し込みが、その後の流入構造そのものを作っている。
なぜこの手が効いたのかは、押し込みの先にあるものを見るとわかる。Shopifyアプリストアは、インストール数とレビューがランキングと検索順位を決める閉じた市場だ。つまり初期の手売りは、売上を作るための行為ではなく、ランキングという資産を買う行為だった。無料配布は割引ではなく、順位への投資である。一度上位に入れば、以後は店側が自分で検索して勝手に入れていく。
現在の流入内訳がその帰結を示している。月間15,000インストールのうち、約50%が口コミと「kaching」という指名検索、40%がオーガニックの一般キーワード、残り10%がアフィリエイト提携と広告。有料流入は1割しかない。
何が効いたのか:選ぶ段階でほぼ決まっていた
Erikasが新しいアプリを選ぶときの基準は3つに整理されている。速く作れること、対象市場が大きいこと、そしてレビュー30件未満の競合しかいない手薄なニッチであること。
3つ目が要である。レビュー30件未満というのは、そのカテゴリの既存プレイヤーがまだランキングという堀を作れていないことを意味する。市場規模は十分にあるのに順位の防御が薄い場所、つまり手売り1,000件で先頭に立てる場所を選んでいる。前節の初期戦術が効いたのは、効く場所を先に選んでいたからだ。
もう一つが価格の置き方だ。Basicは$14.99で全機能が使える。機能で階段を作らず、店側の成果で階段を作っている。追加売上$1,000を生んだ店は$29.00へ、大口は$59.99へ。加盟店から見た投資対効果は34倍という説明になる。
この設計は解約に強い。機能制限型の価格だと、使わない機能のために払っている感覚が解約の理由になる。成果連動型では、支払額が増えているときは必ず店側の売上も増えているので、値上げの瞬間が納得の瞬間になる。SaaSの単価を上げにくい個人開発者にとって、参照点を自社の機能ではなく顧客の売上に置き替えたこの構造は再現価値が高い。
そしてポートフォリオという形。単一アプリではなく複数本を持つことで、1本の順位が落ちても全体は倒れない。Shopifyの外へも手を伸ばしており、Webflow向けのアプリを開発中、別事業としてスクリーンショット編集のPimpMySnapも持っている。
うまくいかなかったこと、そしてリスク
2018年の転向から2021年の初ヒットまで、複数のプロダクトが失敗している。3年分の空振りの上に立っている数字だという前提は外せない。また、Erikas自身は過度なリサーチを避けて素早くMVPを試すこと、そして外注ではなく本気の共同創業者を確保することを教訓に挙げている。裏を返せば、リサーチで止まった時期と、人の当てが外れた時期があったと読める。
構造的なリスクは明確だ。売上のほぼ全量がShopifyアプリストアという単一チャネルに依存している。審査基準、手数料、ランキングアルゴリズム、そしてShopify自身が同等機能を標準搭載する可能性——どれが動いても直撃する。指名検索が流入の半分を占めることは唯一の緩衝材だが、それも店側がアプリストアの中で検索している以上、市場の外に出た資産ではない。
利益率90%も、裏側では2人ですべてのサポートを引き受けているということでもある。人を増やさない方針は利益率を守るが、対応量の上限がそのまま事業の上限になる。
再現の条件と限界
再現できるのは、参入先をレビュー数のような可視化された競合の弱さで選ぶこと、初期にランキングを買う目的で無料配布と手売りを集中投下すること、価格を機能ではなく顧客の成果に連動させること、そして固定費を持たずに利益率を守ることだ。いずれも資金力を前提としない判断である。
再現しにくいのは出発点だ。1本目を$250,000で売却した資金があったからこそ、2本目に腰を据えて取り組めた。この事例を「アプリ1本目からいきなり6桁MRR」と読むと因果を取り違える。加えて、デザインエージェンシー時代にShopifyエコシステムを客側から熟知していたという下地、4年以上続く共同創業者との関係も、外から短期に用意できるものではない。2026年までにMRR $1,000,000という次の目標が同じやり方で届くかは、まだ検証されていない。
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出典
- 本人公開Indie Hackers「Getting out of the freelancing game by building a $100k+ MRR Shopify app portfolio」
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