Marketing Examples、購読者13万人を3年半で。積み上げた「配布」の型と月$2,300のスポンサー枠
Harry Dry氏の無料ニュースレターMarketing Examplesは2019年4月開始、約3年半で購読者13万人。Product Hunt公開で2,000人、以降は15〜20のFacebookグループなどへの手作業の配布で積み上げた。スポンサー1枠は当初月$2,300。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
Marketing Examplesは、コピーとデザインの実例だけを短く載せる一人運営のサイトである。2019年4月の公開から約3年半で、無料ニュースレターの購読者は13万人に達した。有料課金はなく、収益はスポンサーシップに寄っている。注目すべきは伸ばし方で、記事を書く工程と同じかそれ以上の労力が「配る」工程に振られている点にある。
積み上がりのタイムライン
| 時期 | 出来事 | 購読者 |
|---|---|---|
| 2019年4月 | MarketingExamples.com公開 | 0 |
| 2019年8月 | Product Huntで公開 | 約2,000人 |
| — | 流入元の内訳を自分で集計・公開 | 19,000人 |
| — | 節目を通過 | 50,000人 |
| 2021年 | 8ヶ月間、新規コンテンツを作らず | 増加継続 |
| 約3年半後 | — | 130,000人 |
収益はどうなっているか
課金モデルは持たず、スポンサーシップが主軸である。掲載面はサイトのホームページ(記事の横)とメール内の枠で、スポンサーは週単位ではなく複数月まとめてコミットする形を取る。過去にはAhrefs、直近ではSEMRushが入っている。
公開されている単価は「スポンサー1枠で月$2,300」という初期の水準で、その後は引き上げられたとみられるが現在額は開示されていない。したがって本記事では月商をフロントマターに記載していない。コピーライティングの講座を出す構想も示されているが、取材時点では未リリースである。
この事例に劇的な転機はない
正確に書けば、転機らしい転機は2019年8月のProduct Hunt公開しかない。そしてそれが生んだのは約2,000人である。13万人のうち、残る12万8,000人はその一夜では説明できない。効いたのは配布の反復であり、以下の手順が毎回同じ形で回されている。
公開前。記事が8割ほど仕上がった段階で、いちばん強い部分を先に出す。投稿先はFacebookグループ15〜20、Slackグループ5〜10、そしてLinkedIn、X、Instagram、Indie Hackers。
公開後。Xでニュースレターへのリンク付きスレッドを流す。Redditには記事本文をそのまま投稿し、自己宣伝は最小限に抑える。メールではXのスレッドを紹介する。SlackとFacebookのグループにも共有する。
一本の記事に対して、投稿先が数十ある。書く時間よりも配る時間のほうが長い作業設計である。
何が効いているのか
第一に、リンクを貼るのではなくその場に本文を置いている点。Redditやコミュニティは外部リンクの投げ込みを嫌う。全文をネイティブに投稿すれば、そこで読み切った人だけが自分の意思で購読しにくる。到達数は減るが、通過する人の質が変わる。
第二に、チャネル同士がループになっている。Xで拡散した内容がニュースレターの購読につながり、ニュースレターがXのスレッドを紹介して再びXの数字を押し上げ、その両方がサイトへ流れる。どこか一箇所を伸ばすと他の二箇所が連動する構造で、単独チャネル依存よりも折れにくい。
第三に、サイト側の変換率を作り込んでいる。購読の約50%はポップアップ経由で、滞在60秒を超えてから表示される。入口はナビゲーションバー、サイドバーの画像、記事内のCTA、ポップアップの4種類。流入を増やす努力と同じだけ、来た人を取りこぼさない努力に手が入っている。
第四に、コンテンツの形式が減価しにくい。「実例を短く見せる」というアーカイブ型のため、2021年に8ヶ月間まったく新規制作をしなかった期間でも購読者は増え続けた。書き続けないと止まる形式であれば、この空白は成立しない。
サイトそのものが実例になっている
Marketing Examplesが扱う題材は、コピーとデザインの実例である。つまり「良いコピーとは何か」を論じるサイトの本文自体が、読み手にとっての判定対象になる。短く、具体的で、装飾のない文章という形式を守ることが、そのまま商品の品質証明として機能している。
これは配布の効きにも関わる。外部コミュニティに本文ごと投稿する戦術は、置いた文章がその場で完結して読めることが前提になる。長文の解説記事であれば、コミュニティに全文を貼っても最後まで読まれず、リンク投稿と大差ない結果になる。実例1本を数百字で見せる形式だからこそ、投稿先がどこであっても成立する。書き方と配り方が互いを支える設計になっている。
購読者19,000人の時点で流入元の内訳を自分で集計し、公開している点も特徴的である。どのプラットフォームから何人来たかを把握したうえで投稿先を選んでいるため、配布は感覚ではなく実測にもとづく作業になっている。
弱点とリスク
収益がスポンサー一本足である点は素直にリスクである。マーケティング系ツールの広告予算は景気と連動しやすく、複数月コミットは安定と引き換えに単価改定の頻度を下げる。有料購読を持たない以上、読者数が増えても単価が自動では上がらない。
もうひとつ、配布の工程が属人的である。15〜20のFacebookグループと5〜10のSlackグループに毎回手で投稿する作業は、外注すると「宣伝」に見えて弾かれる性質のものだ。仕組みではなく本人の手が動いていることが効果の前提になっている。
加えて、13万人という購読者数と収益規模が釣り合っているとは言いにくい。開示されている月$2,300という枠単価を素直に読むなら、購読者1人あたりの月間収益は極めて小さい。有料コースの構想が繰り返し語られるのは、この乖離を埋める必要があるからだと考えるのが自然である。ニュースレターは規模を作る装置としては優秀だが、規模がそのまま売上になるわけではない。
どこまで真似できるか
再現しやすいのは、公開前ティーザーと公開後の配布を手順化すること、外部コミュニティに本文ごと置くこと、滞在時間で発火するポップアップを含む複数の購読導線を用意することである。いずれも費用はほぼかからない。
再現しにくいのは流通環境のほうだ。英語圏ではマーケティング関係者がFacebookグループ、Slackコミュニティ、Redditに厚く滞留しており、そこに置けば読まれる。日本語圏では同種の受け皿がXとnoteに偏っており、投稿先の数を同じようには確保できない。加えて「8ヶ月休んでも増える」状態は、既に十分な母数と共有され続けるアーカイブが揃った後の結果であって、初期から期待できる性質ではない。
あわせて読みたい
出典
近い規模・近い業種の事例
よく読まれている記事
- 1
Payout、14日で「バイブコーディング」した集団訴訟アプリが9ヶ月でARR $1,003,227。開発費は約$10、伸ばしたのはフォロワー1,000万人の相棒
直近29人が訪問 - 2
売上30円から8年。アプリ3本を並行運営して月20万円に届いた個人開発の記録
直近27人が訪問 - 3
Starter Story、月$91.7Kの起業事例メディアがHubSpotに買収された。「買収すべき」と自分でツイートしてから数ヶ月
直近26人が訪問 - 4
minne販売で最高月商100万円。元デザイナーのハンドメイド作家が語る「売れる写真」の技術
直近22人が訪問 - 5
Instatus、ステータスページ一本でMRR $48K。有料顧客ゼロの「Sup」を捨てて大企業向けに値上げ
直近22人が訪問
新着記事
- 2026年10月8日
VMagicMirror、ほぼ全機能を無料で配ったままBOOTH累計1,000万円。公開4年、2,500円の有料版は「寄付」だった
- 2026年10月8日
Native、成分表が読めなかった弁護士のデオドラントD2Cが約2年半でP&Gへ——$100M現金売却、創業者の持分は9割超だった
- 2026年10月8日
10Beasts、記事8本のAmazonアフィサイトが9ヶ月で月$80Kに——大学生が$570Kで売却した17日後、Googleペナルティが来た
- 2026年10月7日
Repsona、1人で5年・総売上1,240万円——「スタートアップとしては大失敗」と自己査定するタスク管理SaaSの帳簿
- 2026年10月7日
Bargaineering、1日数セントの家計ブログが5年で$3M売却に——Jim Wangが自分で明かし続けた停滞との付き合い方



