受託でMRR $15,000を作り、その金でSaaSを建てる。50歳・実質1人の「サービス→SaaS」構造
データ戦略のコンサルティングで月$15,000以上を稼ぎ、その資金と時間でB2B SaaSを開発している50歳の記録。SaaSはまだ未収益化で、MVPは15〜20時間で組んだ。受託でSaaSを賄う構造の実例。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
外部から資金を入れずにSaaSを作る場合、開発期間の生活費をどこから出すかという問題が必ず残る。ひとつの答えが「受託で稼いでその金で作る」で、この事例はその構造を数字つきで公開している。
コンサルティング事業「Umlaut Consulting」の月次売上は$15,000以上。その資金と時間で、データ成熟度を評価するB2B SaaS「Data Maturity Lab」を建てている。
事業の構成
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受託(コンサル)の月次売上 | $15,000以上 |
| 体制 | 本人1名+オフショアの技術パートナー1名 |
| 事業期間 | 約1年(2025年開始) |
| 受託の課金形態 | 日額ベースの時間単価型 |
| 支払いサイト | 30日 |
| SaaSのMVP構築時間 | 15〜20時間(Replit+Supabase) |
| SaaSの収益 | 未収益化(アルファユーザー段階) |
| 創業者の年齢・経験 | 50歳・キャリア30年 |
受託の領域はデータ戦略、データガバナンス、組織変革である。SaaSはその実務で使ってきた評価フレームワークを製品化したもので、売っているものと作っているものが同じ知識体系の上に乗っている。
この構造の利点は「顧客が先にいる」こと
受託でSaaSを賄うモデルの利点は、資金だけではない。本人が挙げているのは次の点である。
コンサルの実務から、直接ニーズの情報が得られる。何に困っているかを聞くために別途ヒアリングを設計する必要がない。仕事そのものが顧客発見を兼ねている。
30年の専門知識が信頼として働く。初期クライアントの主な獲得源は、12年前からの人間関係だった。広告も営業チームもない。
**低コストで回る。**既存の業務スタック(会計のSage、工数管理のClockifyなど)で足りている。
この点は、医師が7年かけて作りながら顧客発見に5年を要したCydocと対照的だ。あちらは技術と特許を先に積み、営業に踏み出すのが遅れた。こちらは営業が先にあり、そこからプロダクトを逆算している。
それでも解けていない3つの問題
順調に見えるが、本人は課題も明示している。
キャッシュフロー。支払いサイトが30日なので、売上が立ってから現金になるまで時間差がある。月$15,000という数字は、その月に手元にある金額ではない。
コンテキストスイッチ。小さな案件を並行すると認知負荷が上がる。開発に必要なまとまった時間が確保しにくくなる。実際、SaaS開発は週末に集中して行うバースト型になっている。
営業に忙殺される。受託は自分が動かないと売上が止まるので、時間の大半をそこに取られる。結果としてマーケティング活動が後回しになる。
ここに、このモデルの構造的な難しさが出ている。受託は時間を売る商売なので、稼げば稼ぐほど時間が減る。SaaSを作るための資金は増えるが、SaaSを作るための時間は減っていく。同じ非対称は、受託が売上の85%を占めたまま7年で畳んだヘルスAIにも現れている。
「転換の設計」がまだない
本人が最も未確定としているのは、受託からプロダクトへどう移行するかである。Data Maturity Labはまだ収益化していない。アルファユーザーがいる段階で、CRUD機能と集計分析を備えるところまで来ている。
読者からは、個人ブランドへの依存という論点も指摘されている。受託が「この人だから頼む」で成立している場合、その信頼はプロダクトに自動では移らない。誰が作ったかで買う顧客と、何ができるかで買う顧客は別である。
掲載事例の中での位置
$15,000はその4分の1にあたるが、この金額は受託の売上であってSaaSの売上ではない。プロダクト側の売上はゼロである。
つまりこの事例は、SaaS事業としてはまだ始まっていない。記録として価値があるのは、開始前の資金繰りをどう組んだかが数字で見えている点にある。
MVPが15〜20時間で組めたこと
技術面で一点だけ、この事例が示している変化がある。Data Maturity LabのMVPは15〜20時間で組み上がっている。ReplitとSupabaseの組み合わせで、CRUD機能と集計分析まで到達した。
30年のキャリアがあるとはいえ、本人の職能はデータ戦略であって、フルタイムのエンジニアではない。それでも週末2回ぶんの時間でアルファ版が出せている。
この速度は、この事業構造の前提を変える。受託で稼いだ資金を開発に投じる必要が、そもそも小さい。必要なのは金より、まとまった時間のほうである。だからこの事例のボトルネックは資金繰りではなく、コンテキストスイッチと営業時間の圧迫という形で現れている。
言い換えると、「受託で資金を作ってSaaSを建てる」というモデルの主眼は、いまや資金ではなく時間の確保に移っている。
再現の条件と限界
業種をまたいで残るのは、専門領域での受託は、資金と顧客理解を同時に供給するという点だ。ただしそれは、売るに足る専門性が先にある場合に限る。この事例では30年のキャリアが前提になっている。
逆に移植が難しいのは、まさにその前提である。経験の浅い状態で受託を始めれば、単価が上がらず時間だけが消える。この構造は、時間単価が十分に高い人だけが使える。
受託というモデルは、専門性さえあれば個人でも中央値を超える金額に届く。届いたうえで、それでもプロダクトを作ろうとしている点にこの記録の主題がある。
そして最大の限界は、まだ結論が出ていないことである。SaaSが収益化するのか、受託に飲み込まれて終わるのかは、この記録の時点では分からない。約1年という期間は、判定するには短い。
出典
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