海外事例 運営中 直近16人が訪問しました

NinjaPear、LinkedInに提訴された年商$10Mの会社を手放した創業者が、2週間で作り直して6ヶ月で月$15,000

LinkedInスクレイピングAPIのProxycurlを年商$10Mまで育てた創業者が、2025年1月に提訴され、和解して同業へ売却。Claude Codeで2週間で作り直したB2BデータAPI「NinjaPear」は、54日で登録1,036人・ARR $66K、6ヶ月で月$15,000に達した。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

NinjaPear、LinkedInに提訴された年商$10Mの会社を手放した創業者が、2週間で作り直して6ヶ月で月$15,000

前身のProxycurlは年商約$10M、利益率80%、$16Mの買収提案を断ったこともある会社だった。その創業者Steven Goh氏が2026年1月に一人で出し直したB2BデータAPI「NinjaPear」は、6ヶ月後の月間売上が$15,000である。年商$10Mの経営者が再出発すれば桁違いの速さで立ち上がるはず、と読むのが自然だが、数字はそうなっていない。代わりに残っているのは、訴訟で会社を失った人物が「訴えられるのが怖くて、ずっと売ろうとしていた。実際に訴えられるまで」と書き残した記録と、売却交渉で手元に残した2つの資産が次の事業を運んでいる構図だ。本人はIndie Hackersのインタビューと自社ブログで、買収提案の金額、訴訟後の判断、再起動後のユーザー数までを日付つきで開示している。

年表:$16Mを断った会社が、値段を言えない売却で終わるまで

時期出来事
2020年頃Proxycurl(LinkedIn等の公開プロフィールを返すスクレイピングAPI)を開始
2021年ローンチ約18ヶ月でARR $1M
2023年1月ARR約$5Mに接近
2023年4月ARR $3M時点で大手プロキシ事業者から$16M(現金$6M+株式$6M+アーンアウト$4M)の提案。拒否
2024年2月上場MarTech企業から$12M(現金$3.9M+株式$2M+アーンアウト等$6.1M)の提案。拒否
2025年1月LinkedInがProxycurlと創業者を提訴
2025年7月4日和解に伴い閉鎖を告知。長年の競合へ売却(金額はNDAで非公開)
2026年1月30日NinjaPearをB2Bデータ(取引先一覧)APIとして再ローンチ
2026年3月25日ローンチ54日で登録1,036人、ARR $66,000
2026年6〜7月前月売上$15,000超、登録3,163人

Proxycurlの最盛期は年商約$10Mで、本人によれば「80%が純利益」だった。ただし売上の約半分はLinkedInのスクレイピングから来ていた。この一点が、以下のすべての値段を決めている。

訴状が届く前に、買い手はもう値引きしていた

2023年の$16M提案は、ARR $3Mの会社に対して売上の5倍超という水準だ。それでも断った理由は、当時売上が毎年倍になっていたからで、来年には同じ倍率でも数字が倍になる計算だった。2024年の$12Mは現金部分が$3.9Mに縮み、残りが株式とアーンアウトで積まれていた。買い手側は「LinkedIn依存は非常に強いリスクだ」と明言し、「前払いは取引額の30%以下になりうる」と伝えていたという。

ここに、この事例で最初に押さえるべき構造がある。LinkedInが実際に動く前から、市場はLinkedInリスクを価格に織り込んでいた。現金比率の低さは買い手の吝嗇ではなく、訴訟が起きたときの損失を売り手に持たせる設計だった。創業者はその間ずっと出口を探しつつ、提示額に納得できずに断り続けていた。2025年1月に訴状が届き、選択肢は消えた。

争わなかった理由は2つ書かれている。米国の訴訟費用は勝っても回収できない(いわゆるアメリカン・ルール)こと、そして相手がMicrosoft傘下で資金に上限がないこと。和解し、2025年7月4日に閉鎖を告知して、事業は長年の競合に売却された。金額はNDAで書けないとしている。1年後の振り返りで本人が残した一文は「もう二度と会社は売らない」で、理由として売却後に知的財産の扱いをめぐる後悔があったことを挙げている。編集部の読みでは、この売却は年商$10M・利益率80%という数字に対する値付けではない。訴訟が終わった直後の「早く手放したい売り手」に対する値付けだ。

2週間で作ったことより、交渉で残した2つのもの

再起動は速かった。中足骨を骨折して療養している間に、Claude Codeで2週間でプロトタイプを作り、公開した。ただ、Indie Hackersのコメント欄で読者が指摘したとおり、動いているのはコードではない。売却交渉のなかで創業者は、購読者2万人のニュースレターと元のドメインを手元に残す条件を通していた。「何年もかけて作ったメールリストが仕事をしている」という読者の言葉に、本人も異を唱えていない。

NinjaPearという名前自体は2024年にAIライブチャット製品として一度使われ、登録163人・導入ゼロで終わっている。2026年1月30日に出し直した中身は、企業情報・従業員数・企業の更新情報・「その企業と取引している顧客の一覧」を返すAPIで、ログインの壁の向こうは一切取らず、LinkedInも取らない。LLMと公開ウェブの深掘りで組み立てる、という設計にした。課金はクレジット制で、企業詳細2クレジット、従業員数2クレジット、取引先一覧は1クレジット+結果1件ごとに2クレジット、無料トライアルは3日間10クレジット。2026年3月には無料枠を毎分2リクエストに絞り、サブスクリプション階層で上限を分ける方針を書いている。

ローンチ54日で登録1,036人・ARR $66,000。6月には前月売上$15,000超まで来た。3ヶ月で年換算売上はおよそ2.7倍で、本人は「黒字化して指数的に伸びている」と書いている。

「あなたの競合が登録しました」という件名

登録者を300人から3,163人へ、5ヶ月で10倍にした施策を本人が公開している。新規登録があるたびに、自社APIで同業他社の似た役職の人物を探し、勤務先メールを特定し、「あなたの競合が登録しました」という件名でテンプレートの営業メールを自動送信するエージェントだ。競合の名前を出す、好奇心を突く、取り残される不安を煽る、の3点で組んであると説明している。

自社の製品でそのまま自社の営業を回す、いわゆるドッグフーディングの典型で、費用の記載はない。効いた指標として出ているのは登録者数で、有料転換率は書かれていない。編集部としては、登録10倍と月$15,000のあいだにある換算率が伏せられている点は、そのまま伏せられた数字として扱う。SEOを「最も効いた流通経路」と本人が別の箇所で書いている以上、この営業エージェントは売上の主因ではなく、登録数の主因だと読むのが安全だ。

効かなかったこと、そしてこの人物にしかない条件

Redditへの投稿は伸びなかった。解約の主因として本人が挙げるのは速度で、キャッシュ済みのLinkedInデータを一瞬で返していたProxycurl時代の体験と、リアルタイムでLLMがウェブを調べるNinjaPearの待ち時間が比較されてしまう。合法性を買った代償が遅延として毎回請求される構造で、本人も「まだ格闘中」と認めている。成長要因を1つ挙げてほしいという問いへの答えは「まだ分かっていない。1つではない。製品とマーケと文言と顧客像を絶えず回しているだけだ」だった。

再現の話をする前に、この事例に固有の下地を書いておく。創業者はエンジニア歴20年超、過去に2回のイグジット、5つの会社を起こしている。暗号資産で約$1Mの利益を得てすでに売却済みで、そのクッションが「10回失敗していい」という姿勢を支えていると本人が明かしている。家賃の心配がない人間の6ヶ月と、ある人間の6ヶ月は同じ長さではない。

持ち帰れる条件と、持ち帰れないもの

同じ「プラットフォームの規約や訴訟で前提が崩れた」型では、Reddit APIの商用ライセンスが取れずMRR $35Kの黒字のまま閉じたGummySearchと、無料拡張をLinkedInに止められて4週間で作り直し、3ヶ月でMRR $62,000に戻したKleoが並ぶ。閉じた側と作り直した側の差は、手元に残った配信資産の有無で説明がつく。

  • 訴訟や規約変更のあとに同じ市場で出し直せるのは、売却や閉鎖の交渉で顧客リストやドメインのような配信資産を手元に残せたときだけ
  • 「ログインの壁の向こうは取らない」という設計が売りになるのは、顧客側にも法的リスクを避ける動機があり、遅延を許容してくれる用途に絞れたときだけ
  • 登録者を営業エージェントで10倍にする施策が成立するのは、自社製品がそのまま見込み客の特定に使える業種で、送信先の反感を織り込める場合だけ

限界も書いておく。月$15,000という数字は前月の総売上で、利益も解約率も出ていない。売却額はNDAで不明のままで、前身の$10M ARRも本人申告である。何より、この再起動は年商$10Mの会社を経営した人物の資金と人脈と2万人のリストの上で行われており、コードを2週間で書けたことは、そのうち最も再現しやすく、最も寄与の小さい部分だ。

出典

本記事は上記の公開情報の要約と独自分析です。 詳細は必ず出典をご確認ください。
この記事は、出典として「Small Start(small-start.com)」の明記と本ページへのリンクがあれば、ニュース・ブログ・生成AIの回答などで自由に引用・転載できます(事前連絡は不要です)。 転載・引用について →

近い規模・近い業種の事例

よく読まれている記事

  1. 1

    Payout、14日で「バイブコーディング」した集団訴訟アプリが9ヶ月でARR $1,003,227。開発費は約$10、伸ばしたのはフォロワー1,000万人の相棒

    直近29人が訪問
  2. 2

    売上30円から8年。アプリ3本を並行運営して月20万円に届いた個人開発の記録

    直近27人が訪問
  3. 3

    Starter Story、月$91.7Kの起業事例メディアがHubSpotに買収された。「買収すべき」と自分でツイートしてから数ヶ月

    直近26人が訪問
  4. 4

    minne販売で最高月商100万円。元デザイナーのハンドメイド作家が語る「売れる写真」の技術

    直近22人が訪問
  5. 5

    Instatus、ステータスページ一本でMRR $48K。有料顧客ゼロの「Sup」を捨てて大企業向けに値上げ

    直近22人が訪問

新着記事

この記事が参考になったら、シェアで応援
Xでシェア