仮想通貨アプリの副業収益が月30万円から月数千円へ。2万インストール、1送客1.8万円が消えるまで
メーカー勤務の会社員が趣味で作った仮想通貨デモトレードアプリ「BitVirtual」が、2017年11〜12月のブームで2万インストール・月商30万円に到達。取引所アフィリエイトは1送客最大18,000円だったが、翌年末には月数千円まで落ちた。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
副業アプリの収益記事は、伸びたところで筆が止まるものが多い。この事例は逆で、ピークとその1年後の両方が同じ人物の口から語られている。メーカー勤務のかたわらアプリを開発していたShota Nakamura氏の「BitVirtual」は、2017年の仮想通貨ブームで月商30万円に届き、2018年12月の取材時点では月数千円まで落ちていた。約2桁の下落である。掲載された数字はすべて2018年12月時点のものだ。
ピークと現在
| 時点 | 状態 |
|---|---|
| 2017年11〜12月(仮想通貨ブーム期) | インストール2万、月商30万円 |
| 当時の送客単価 | 取引所アフィリエイトで最大18,000円/件 |
| 2018年12月(取材時点) | 月数千円、アフィリエイト条件も低下 |
| ユーザー属性 | 20〜30代の男性がほとんど |
| 制作費 | 紹介動画は海外テンプレ約2,000円+クラウドソーシングで計1万円程度 |
月商30万円を送客単価18,000円で割ると、月あたり約17件の口座開設に相当する。実際には単価の低い案件も混ざるはずなので、件数はこれより多いと見るのが自然だが、いずれにせよ2万インストール規模のアプリが月に十数件から数十件の口座開設を生んでいた計算になる。個人開発の副業アプリとしては、桁がひとつ違う水準である。
比較の物差しになるのが、崩壊後の「月数千円」という数字だ。同じ取材で紹介されている他の個人開発アプリを見ると、4.3万DLのドローン飛行マップアプリが広告収益で月1.5万円、5万DLの瞑想タイマーが月2万円。2万インストールのアプリを純粋な広告マネタイズで運用したときの相場は、まさに月数千円〜1万円台である。つまりBitVirtualの月30万円は、アプリの規模が生んだ数字ではなく、接続していた市場の単価が生んだ数字だった。
デモトレードという装置
アプリの中身は仮想通貨のデモトレードである。着想は開発者自身の体験に由来する。ビットコインを30万円のときに買ったものの「すぐビビって売ってしまった」経験から、シミュレーションできたら面白いのではないかと考えた。
このプロダクト設計が、結果として強力な見込み客の選別装置になった。デモトレードをわざわざインストールする人は、仮想通貨取引に関心はあるが実際の入金には踏み切れていない層である。取引所にとっては、関心ゼロの一般層よりはるかに欲しい母集団だ。しかもアプリ側は、誰がどれだけの成績を出しているかを把握できる。
実際に打たれていた施策がそこを突いている。
デモトレードの特性を活かして、好成績を出している人に「口座開設しませんか?」というダイアログを出したり、という工夫もしていました。
仮想の売買で利益を出した直後は、自己効力感が最も高い瞬間である。「自分にはできる」という感覚が実口座開設への心理的障壁を下げる。全ユーザーに一律で勧誘を出すのではなく、成功体験の直後にだけ出す。同じ導線でも転換率が変わる設計だ。
上げも下げも外から来た
この事例の転機は、開発者の施策ではなく市場そのものだった。それを裏づけるデータも本人が挙げている。
アプリのユニークユーザー推移と、ビットコインのチャートを重ねると、ほぼ似たような動きをしていた。
トラフィックがビットコイン価格に連動していたということは、需要が完全に外生だったことを意味する。2017年11月から12月にかけての価格急騰でインストールが伸び、2万に到達した。そして価格が落ちれば、同じ曲線を逆にたどる。
さらに悪いことに、落ちたのはトラフィックだけではなかった。「アフィリエイトの条件も下がってしまって…」と本人が述べているとおり、送客単価も同時に引き下げられている。アフィリエイト収益はトラフィック×転換率×単価の掛け算であり、そのうち2項が同時に下がれば、結果は桁で落ちる。月30万円から月数千円という約98%の下落は、この掛け算の性質そのものだ。
しかも単価は開発者側が一切コントロールできない変数である。取引所の広告予算はブーム期に膨らみ、市場が冷えれば削られる。1件18,000円という水準は、当時の取引所が新規口座獲得に払っていた異常な単価であって、アプリの価値が決めた値段ではなかった。
本人が挙げた反省
振り返りとして語られているのは2点である。ひとつは「一番は『ビットコイン買っとけばよかった』と思います」という、半ば冗談めいた後悔。もうひとつが事業判断に関わる。
あとは、勢いがあったときにプロモーションもすべきだったかなと。
これは重要な指摘だ。1件あたり18,000円という送客単価が成立していた期間は、広告出稿の採算が合う数少ない局面だった。ブーム期は広告のインストール単価も高騰するが、それでも回収単価が18,000円あれば、有料獲得で規模を数倍にできた可能性がある。稼いだキャッシュを次のインストールに再投資しないまま、外生的な需要が引くのを待ってしまった。ピークが外から来た事業は、ピークの間にしか自力で規模を作れない。
一方で、この事例には救いもある。制作コストが極端に低い。アプリの紹介動画は海外のテンプレートを約2,000円で購入し、素材の差し替えだけをクラウドソーシングに依頼して、合計1万円程度で仕上げている。本人が「この方法であれば、個人開発者でも1万円くらいの予算で、手軽に動画もつくりやすい」と述べているとおりだ。固定費が小さいため、収益が月数千円まで落ちても撤退を迫られない。会社員としての本業を持ったまま趣味で開発していたことも含め、下落局面で失うものが少ない構造になっていた。
何が再現でき、何ができないか
再現できるのは、プロダクトを見込み客の選別装置として設計する発想である。「やってみたいが踏み切れない」層を集め、その中から意欲の高い個人を行動データで特定し、最も背中を押しやすいタイミングでオファーを出す。デモトレードに限らず、資格試験、投資、副業、転職といった高単価アフィリエイトが存在する領域なら同じ形が組める。制作費1万円で紹介動画を用意する運用の軽さも、そのまま真似できる。
再現できないのは、単価そのものだ。1送客18,000円という水準は、2017年の仮想通貨取引所が競合と激しく獲得競争をしていた特殊な時期の産物である。同じアプリを1年後に作っても、同じ収益は出ない。この事例のピークは、実力ではなくタイミングが8割を占めていた——そして本人もそれを認めている。
そこから引き出せる教訓は単純である。単一のアフィリエイトプログラム、単一のテーマ、外生的な需要という3つが揃った収益は、伸びるときも落ちるときも自分の手を離れている。稼げている間に、その収益をコントロール可能な資産(ユーザー基盤、別カテゴリのプロダクト、有料獲得のノウハウ)に変換できるかどうかが、ブームの後に何が残るかを決める。
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- ヒトデ氏のブログ運営 — 検索アルゴリズムという外部要因の変動に晒されながら、収益源を分散させていった事例。
- Photo AIを個人で運営するlevelsio — 同じく「波」に乗った個人開発だが、波のうちに規模を作りにいった側の記録として対照的である。
出典
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