月間UU100万・アクティブ1万人。二次創作プラットフォームを終わらせたのは1行の削除だった
月間ユニークユーザー約100万・アクティブユーザー約1万人まで育ったゲーム二次創作プラットフォームが終了するまでの記録。原因はコード1行の削除と、ポケットマネーで支えていたサーバー構成の限界だった。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
ゲームの二次創作をアップロードして遊べるプラットフォームが、2025年にサービスを終了した。終了時点のアクティブユーザーは約1万5,000人、Cloudflare上の月間ユニークビジター数は約100万。公式Discordには1万人が参加していた。
これだけの規模まで来た個人運営のサービスが、なぜ止まったのか。運営者本人が技術的な原因まで含めて記録を残しているので、数字をそのまま追う。
サービスの規模
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 月平均アクティブユーザー | 約1万人 |
| 終了直前のアクティブユーザー | 約1万5,000人 |
| 月間ユニークビジター(Cloudflare) | 約100万 |
| 公式Discord参加者 | 1万人 |
| 月間の投稿者 | 約400人 |
| 100万再生を超えたYouTube動画 | 約10本 |
| 10万再生を超えたYouTube動画 | 約70本 |
投稿者は月400人、視聴側は月100万。この比率が、このサービスの性格をよく表している。作る人が少数で、遊ぶ人が圧倒的に多いUGCプラットフォームだった。実況動画がYouTubeで100万再生級に育っていたことからも、外側の流入は十分に太かったことが分かる。
サーバー費用と、その伸び方
| 項目 | 推移 |
|---|---|
| 月額コスト | 約$5(ストレージ代)→ 約8,000円 |
| サーバースペック | 2コア12GB → 8コア32GB |
| リクエスト(初期) | 1,000〜1,500 req/分 |
| リクエスト(クライアント正式版後) | 5,000 req/分 |
| リクエスト(終了時) | 150 req/秒(約9,000 req/分) |
注目したいのは、月100万UUを捌いていたインフラの費用が月8,000円だったことである。年に直せば10万円弱。個人がポケットマネーで負担できる範囲に、ぎりぎり収まっていた。
裏を返せば、その範囲を超えた瞬間に選択肢がなくなる構成でもあった。収益がないので、負荷が増えてもスケールに金を払えない。費用を抑えられたことと、逃げ道がなかったことは同じ事実の裏表である。
引き金は.limit(20)の削除
終了の直接の原因は、単一のコミットだった。クエリから.limit(20)が外れたことで、ほぼすべてのアクセスがテーブル全走査を引き起こす状態になった。対象テーブルの行数は1.7万〜4.7万行。
運営者の計算によれば、この状態で毎秒2,750万行のクエリと12.75GBのJSON送信を試みていたことになる。取得件数を20件に絞る1行が消えただけで、必要な処理量が桁違いに膨らんだ。
なぜ気づかなかったのかについて、本人は3つを挙げている。健康状態が悪いなかでコードの最適化を進めていたこと、コードレビューが存在しなかったこと、テストが不十分だったこと。1人運営では、この3つが同時に成立してしまう。
400人が支えていた100万人
もう一段見ておきたいのは、投稿者400人と視聴者100万人という比率である。2,500人に1人しか作らない。UGCプラットフォームとしては珍しい数字ではないが、事業としての意味は重い。
視聴者100万人は、投稿者400人が作ったものを見に来ている。つまりこのサービスの供給は、実質400人の手に乗っていた。投稿が止まれば、翌月には視聴も消える。逆に言えば、400人を維持するコストさえ払えれば、100万人分の需要は保たれる構造でもあった。
YouTube側の数字がそれを裏づけている。100万再生を超えた実況動画が約10本、10万再生が約70本。外部のクリエイターが、このサービスの集客を無償で代行していた。広告費ゼロで月100万UUに届いた理由はここにある。
伸ばす仕組みは完成していた。欠けていたのは、そこから1円も回収していなかったことだけである。
「復旧できたはず」が難しかった理由
原因が1行であるなら、戻せば直りそうに思える。実際、運営者は復旧の判断を誤ったと振り返っている。ただ、その判断が難しかった条件も揃っていた。
まず負荷はすでに構造的に上限へ近づいていた。1行のミスがなくても、クライアントの正式リリース後に5,000 req/分まで伸びており、終了時点では9,000 req/分に達している。VPS1台構成でこの水準を安定運用するのは無理があった。
次に、収益がないので増強に踏み切る根拠が作れない。売上があれば「月3万円払ってでも維持する」という判断ができるが、収益ゼロの事業では追加支出がそのまま持ち出しになる。
そして、運営者の健康状態が悪化していた。技術的な復旧は可能でも、それを実行する人が1人しかいない。
同じ構造は、10年運営して収益ゼロだった囲碁ブラウザゲームにも見える。あちらは維持費が年4,000円未満だったため止まらずに10年続いたが、こちらは規模が大きくなった分だけ、限界に早く当たった。無料で提供するサービスは、成功するほど支出が増える。
数字が語る、収益化しなかったことの重さ
このサービスには、そこに載せる数字がない。
月間100万UUという規模は、月商数十万円クラスのメディアやアプリより明確に大きい。足りなかったのは人ではなく、その人数を金額に変換する仕組みだった。
広告でも、投稿者向けの有料機能でも、Discordの支援課金でも、月8,000円のサーバー代を回収する手段はいくつも考えられる。1万人規模のDiscordコミュニティを抱えていたことを踏まえれば、月数千円の支援を集めるハードルは高くなかったはずだ。それでも収益化されないまま、負荷だけが増えていった。
再現の条件と限界
個人開発に引き寄せて言えることは2つある。1人運営では、レビューとテストの欠如が「いつか必ず起きる事故」になる。健康状態が悪いときほどコードを触るという状況は、個人開発では珍しくない。もう1点は、無料サービスは規模が大きくなるほど撤退圧力が上がるということだ。ユーザーが増えて嬉しい局面と、支出が増えて苦しい局面が同時に来る。
引き寄せられないのは、UGCという性質である。投稿者400人が抜ければ、視聴者100万人も同時に消える。需要を確かめる工程を挟まないまま作り込んで止まった個人開発アプリとは逆に、このサービスは需要の側が完全に証明されていた。証明されていたからこそ、止まったときの損失が大きい。
なお、この記録には収益に関する数字が一切出てこない。ポケットマネーでの運営と書かれているだけで、広告を試したのか、課金を検討したのかは分からない。月100万UUを持っていた事業が何も収益化していなかったのか、それとも試して失敗したのかは、この記録からは読み取れない。
出典
近い規模・近い業種の事例
よく読まれている記事
- 1
Payout、14日で「バイブコーディング」した集団訴訟アプリが9ヶ月でARR $1,003,227。開発費は約$10、伸ばしたのはフォロワー1,000万人の相棒
直近29人が訪問 - 2
売上30円から8年。アプリ3本を並行運営して月20万円に届いた個人開発の記録
直近27人が訪問 - 3
Starter Story、月$91.7Kの起業事例メディアがHubSpotに買収された。「買収すべき」と自分でツイートしてから数ヶ月
直近26人が訪問 - 4
minne販売で最高月商100万円。元デザイナーのハンドメイド作家が語る「売れる写真」の技術
直近22人が訪問 - 5
Instatus、ステータスページ一本でMRR $48K。有料顧客ゼロの「Sup」を捨てて大企業向けに値上げ
直近22人が訪問
新着記事
- 2026年10月8日
VMagicMirror、ほぼ全機能を無料で配ったままBOOTH累計1,000万円。公開4年、2,500円の有料版は「寄付」だった
- 2026年10月8日
Native、成分表が読めなかった弁護士のデオドラントD2Cが約2年半でP&Gへ——$100M現金売却、創業者の持分は9割超だった
- 2026年10月8日
10Beasts、記事8本のAmazonアフィサイトが9ヶ月で月$80Kに——大学生が$570Kで売却した17日後、Googleペナルティが来た
- 2026年10月7日
Repsona、1人で5年・総売上1,240万円——「スタートアップとしては大失敗」と自己査定するタスク管理SaaSの帳簿
- 2026年10月7日
Bargaineering、1日数セントの家計ブログが5年で$3M売却に——Jim Wangが自分で明かし続けた停滞との付き合い方



