Arvid Kahl氏、購読者23人から7,600人へ。SaaS売却後に183号で作った月商$3,000のニュースレター
MRR$55,000のSaaSを2019年に売却したArvid Kahl氏が次に選んだのは、購読者23人から始めたニュースレターだった。183号を重ねて7,600人・月商$3,000。スポンサー枠は1号6枠である。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
事業を売却して「人生が変わる金額」を手にした人間が、次に何を始めるか。Arvid Kahl氏の答えは、購読者23人のニュースレターだった。
同氏は2019年、オンライン教師向けの生産性SaaS「FeedbackPanda」を共同創業者と共に売却している。売却前のMRRは$55,000、外部資金は一切入れていない。その2ヶ月ほど後の2019年11月に始めたのが「The Bootstrapped Founder」である。Indie Hackersが取材した時点で第183号、購読者7,600人、月商$3,000。売却額と比べれば桁違いに小さい数字だが、一人で回すメディア事業の現実的な到達点として、この規模の開示は貴重である。
数字の推移
| 時点 | 購読者 | 収益・関連数値 |
|---|---|---|
| 2019年(売却時) | — | FeedbackPandaのMRR $55,000 |
| 2019年11月(創刊) | 23人 | 収益なし |
| 第183号時点 | 7,600人 | 月商$3,000 / Twitterフォロワー97,000人 |
| その後(Passionfroot取材時) | 約10,000人 | 週あたり4桁ドル / ポッドキャスト累計17.5万DL超 / Twitter10万人超 |
購読者1人あたりの月間売上は$3,000÷7,600人=約$0.39。年間では1人あたり$4.7前後になる。ニュースレター広告の相場としては高い部類に入る水準である。
何を売っているのか
収益源はスポンサーシップと有料クラシファイド枠である。1号あたりの構成はメインスポンサー枠が2つ、末尾のクラシファイド枠が4つの計6枠。ここに自身の情報商品を随時挟む。有料購読モデルは採っていない。
制作は週次で固定されている。月曜に企画からトピック決め、アウトライン、執筆完了までを終える。火曜から水曜にかけてポッドキャスト版とYouTube版を制作し、スポンサー素材を用意する。木曜に週刊号を編集し、金曜に配信する。使用ツールはConvertKit(配信)、Notion(執筆)、Grammarly(校正)、HelloPalladio(メールテンプレート)、Syften(ソーシャル監視)など。1本の原稿をニュースレター・ポッドキャスト・YouTube・ブログの4形式に展開する構造が、この週次サイクルに組み込まれている。
この事例に劇的な転機はない
23人から7,600人までの間に、単発でバズった号も、急成長を生んだ施策も語られていない。効いたのは継続そのものである。本人の言葉が最も直接的だ。
「継続こそが人を惹きつけ続ける。200週連続で何かをやっている人間は本気だ、と皆が理解する」
第183号という数字は、3年半以上ほぼ毎週配信し続けたことを意味する。増加を1号あたりに割ると、平均で週41人強。派手さのない積み上げである。
集客手段として本人が挙げるのは、各記事のTwitterでの投稿、SparkLoopのリファラル(未公開資料へのアクセスを特典にする)とパートナーネットワーク、そしてYouTube・ポッドキャスト・ブログの相互リンクである。ただし最も効果が大きいものとしては別の要因を挙げている。「口コミが最も良い結果をもたらす」——具体的には、クリエイター同士の関係構築だという。
購読者1人$4.7の内訳を解く
7,600人という規模で月$3,000が成立している理由は、読者の属性にある。
The Bootstrapped Founderの読者は、ブートストラップで事業を作る創業者に極端に偏っている。この層は開発者向けツールやSaaSの購買決定者そのものであり、スポンサーにとっては露出単価(CPM)ではなく獲得単価で採算が合う。一般的な読み物系ニュースレターが数万人規模でようやく届く金額を、7,600人で出せているのはこの偏りによる。読者数ではなく読者の同質性が価格を決めている、という構造である。
もう一つの要因は、Kahl氏自身の信用が営業コストを下げている点だ。MRR$55,000のSaaSを売却した当事者が、その過程を書く。スポンサー獲得の方法として挙げられているのは、過去のスポンサーへの再アプローチ、Twitterでの発信、募集の告知、自身のスポンサー窓口ページを全チャネルで共有すること、いずれも自分から売り込みに行く形ではない。同氏は「Twitterで活発に活動している創業者がいるブランドを探すようにしている。金銭的にもwin-winだが、本当に欲しいのは関係の方だ」と述べている。スポンサー枠を、広告在庫ではなく同業者との関係として扱っている。
うまくいっていない部分
同氏は複数の事業に失敗しており、「多くが失敗した。いくつかはひどい失敗だった」と語っている。ニュースレター運営で最も難しい点として挙げるのはインポスター症候群だ。
「難しいのはインポスター症候群を乗り越えることだ。『これについて語る自分は何者なのか』という問いが常に付きまとう」
事業としての限界も見ておくべきである。月商$3,000は、多くの国で一人分の生活費を賄うには足りない水準だ。この事業が成立しているのは、売却で得た資金、書籍2冊、ポッドキャスト、YouTubeという他の柱があるためで、ニュースレター単体で自立しているわけではない。収益がスポンサー一本である以上、広告予算が絞られる局面では直撃を受ける。加えて枠数が1号6つに固定されているため、売上の上限は「枠数×単価」で機械的に決まる。購読者を増やして単価を上げるか、枠を増やして体験を損ねるかの二択になりやすい。
再現できる部分と、できない部分
再現できるのは制作の仕組みである。週の各曜日に工程を割り当てて固定し、1本の素材を4形式に展開する。これは資本もフォロワーも要求しない。読者層を意図的に狭く保ち、スポンサーが買いたい属性と一致させる設計も、規模に関係なく採用できる。
再現できないのは初期条件だ。創刊時点で同氏はすでにTwitterに数万人規模のフォロワーを持ち、SaaS売却という実績があった。23人からのスタートに見えるが、リストがゼロだっただけで、認知はゼロではない。この事例から取り出せるのは「実績のある領域について、週次で3年半書き続けると7,600人と月$3,000になる」という時間軸の目安であって、無名の状態から同じ曲線を描けるという話ではない。逆に言えば、既に何かを売却した、あるいは達成した経験のある人間にとって、その経験を毎週書くことが次の事業の入口になり得る、という実例である。
あわせて読みたい
- ScrapingBeeの売却まで — コンテンツを主軸に育てたブートストラップSaaSの、出口までの数字。
- Sidekiq、一人で年商1億円超 — 開発者コミュニティの中で信用を積み上げた別の一人事業。
出典
- 本人公開Indie Hackers「How Arvid Kahl grew his newsletter to 7,600 subscribers & $3000/mo revenue」
- 本人公開Passionfroot Blog「Arvid Kahl: 4-figures a week with sponsorships」
近い規模・近い業種の事例
よく読まれている記事
- 1
Payout、14日で「バイブコーディング」した集団訴訟アプリが9ヶ月でARR $1,003,227。開発費は約$10、伸ばしたのはフォロワー1,000万人の相棒
直近29人が訪問 - 2
売上30円から8年。アプリ3本を並行運営して月20万円に届いた個人開発の記録
直近27人が訪問 - 3
Starter Story、月$91.7Kの起業事例メディアがHubSpotに買収された。「買収すべき」と自分でツイートしてから数ヶ月
直近26人が訪問 - 4
minne販売で最高月商100万円。元デザイナーのハンドメイド作家が語る「売れる写真」の技術
直近22人が訪問 - 5
Instatus、ステータスページ一本でMRR $48K。有料顧客ゼロの「Sup」を捨てて大企業向けに値上げ
直近22人が訪問
新着記事
- 2026年10月8日
VMagicMirror、ほぼ全機能を無料で配ったままBOOTH累計1,000万円。公開4年、2,500円の有料版は「寄付」だった
- 2026年10月8日
Native、成分表が読めなかった弁護士のデオドラントD2Cが約2年半でP&Gへ——$100M現金売却、創業者の持分は9割超だった
- 2026年10月8日
10Beasts、記事8本のAmazonアフィサイトが9ヶ月で月$80Kに——大学生が$570Kで売却した17日後、Googleペナルティが来た
- 2026年10月7日
Repsona、1人で5年・総売上1,240万円——「スタートアップとしては大失敗」と自己査定するタスク管理SaaSの帳簿
- 2026年10月7日
Bargaineering、1日数セントの家計ブログが5年で$3M売却に——Jim Wangが自分で明かし続けた停滞との付き合い方



