ストックフォト4年で累計18.5万円。「月4,000円」というリアルな中央値の記録
写真撮影によるストックフォト(Adobe Stock・写真AC・PIXTA)を4年続けた実録。累計売上は約18.5万円、月平均約4,000円。ほぼ放置でも「月1回の飲み代」程度は入り続ける——華やかな成功譚の対極にある、参入者の中央値に近いデータ。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
副業メディアに載るストックフォトの記事は、たいてい上振れ側の成功譚である。しかし参入判断の材料として本当に必要なのは、「普通の人が普通に続けたら何円になるのか」という中央値のデータだ。旅行系ブログ「ソロ旅note」の運営者が公開した4年間の売上記録は、まさにその空白を埋める。累計約18.5万円、月平均約4,000円。この数字を「夢がない」と読むか、「ほぼ放置での下限値」と読むかで、ストックフォトという副業の見え方は大きく変わる。
公開されている数字
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 累計売上(4年) | 約18.5万円 |
| 月平均 | 約4,000円(2024年は年約5万円) |
| 2024年の新規登録 | 854枚(目標2,000枚に未達) |
| 販路 | Adobe Stock(ドル建て)・写真AC・PIXTA |
本人の集計では、Adobe Stock分はドル建てで支払われるため円安の恩恵が大きく、1ドル150円換算で12万円超に相当するという。つまり累計約18.5万円の過半はAdobe Stock一社が稼いでおり、国内2サイト(写真AC・PIXTA)は残りを分け合う構図になっている。
始まりは「コロナ禍の暇」だった
開始は2020年。旅行会社勤務だった運営者は、コロナ禍で出社が週1程度になり、空いた時間の使い道としてストックフォトを始めた。撮るのは風景写真専門。旅行ブログの運営と地続きで、旅先で撮った写真をそのまま素材として登録するスタイルである。
つまりこの記録は「本気で稼ぎに行った4年」ではなく、「生活の副産物を登録し続けた4年」のデータだ。本人自身が「放置の極み」「反省しかない」と振り返っており、2024年の活動で良かった点として挙げるのは、2023年秋の海外旅行で新規写真を追加できたことくらいだという。この前提を押さえずに「4年で18.5万円しか稼げない」と読むと、データの意味を取り違えることになる。
3サイトで何が売れているか
| サイト | 売上上位の被写体 |
|---|---|
| 写真AC | 青い空と白い雲の背景/大阪梅田の都市景観/靴 |
| Adobe Stock | 大阪梅田の都市風景/竹林の竹の子/日の出の姫路城 |
| PIXTA | 蹴上インクラインの雪景色/アンコールワット/ヴュルツブルクの眺望 |
並べると法則性がはっきり見える。売れているのは、横長のランドマーク風景(大阪梅田・姫路城・アンコールワット)と、空・雲のような汎用背景。いずれも「デザイナーやWeb担当者が資料やバナーの背景に使う絵柄」であり、作品としての写真の良し悪しとは別の軸で市場が動いている。しかもこの傾向は年をまたいでほぼ変わらないという。
横向き(横長)の写真が売れやすいという観察も同じ文脈にある。Webサイトのヒーロー画像もプレゼン資料も横長であり、需要側の用途がフォーマットを規定しているのだ。
もう一つ、表から読み取れるのは3サイトで売上上位が一致していないことだ。大阪梅田は写真ACとAdobe Stockの両方で上位に入る一方、PIXTAの上位は雪景色や海外(アンコールワット・ヴュルツブルク)で構成が異なる。同じ素材群を並べても、サイトごとに買い手の層と検索のされ方が違うため、売れるものがずれる。写真ACの上位に「靴」という物撮りが混ざっているのも示唆的で、何が当たるかは事前には読み切れない。だからこそ複数サイト併売は、手間の割に合理的な分散になっている。
数字の裏を読む
成果を分ける変数は撮影技術ではなく「登録量×需要適合」である。4年やっても売れ筋が変わらないということは、需要のパターンは最初から観測可能だったということだ。逆に言えば、初年度から需要側(使う人の用途)に寄せて撮り、量を積めば、この中央値は超えられる。AI生成素材で年50万円を作った事例との約10倍の差は、才能ではなく制作コスト構造と需要選定の差として説明がつく。
量を積まない年は伸びない、という点も正直に数字に出ている。2024年の新規登録は854枚で目標2,000枚の半分以下、収益は月4,000円前後で横ばいだった。ストック型は「置いた資産の量×1枚あたりの需要」でほぼ決まる。本人も「主力のAdobe StockとPIXTAくらいは登録2,500枚くらいまで持っていかないと」と、量の不足を次の課題に挙げている。
そして為替が第三の変数として効いた。Adobe Stockはドル建てのため、円安局面では何もしなくても円換算の受取額が増える。累計18.5万円のうち12万円超がAdobe Stock分という偏りには、素材の質だけでなく為替の追い風が含まれている。円高に振れれば同じ理屈で減る。為替の効果を片側だけ見るのは正確ではない。
「ほぼ放置で月4,000円」の位置づけ
月4,000円は、時給換算で副業を評価する物差しでは「割に合わない」部類に入る。だがこの収益の性質は、追加労働ゼロで入り続けること、一度登録した素材は消えないこと、撮影が旅行など生活と兼ねられることの3点で、フロー型の副業と根本的に異なる。せどり3ヶ月目の実データが示すように、フロー型は手を止めた瞬間に収益もゼロになる。ストックフォトの月4,000円は「労働を止めても完全にはゼロにならない資産」の下限値として読むべき数字だ。
再現の条件と限界
この記録から他の人がそのまま引き継げるのは次の点だ。旅行や外出の習慣が既にある人なら、追加コストほぼゼロで「中央値=月数千円」には到達しうる。売れ筋(横長ランドマーク+汎用背景)は公開情報から観測可能で、需要に寄せる工夫に特別な機材や技術は要らない。参入障壁の低さは、そのまま「誰がやっても大きくは外れない」再現性の高さでもある。
一方で、この記録が保証しないことも明確だ。金額の桁で言えば、月4,000円から本業級への道はこの延長線上にない。同じやり方を続けた場合の到達点が「4年で月4,000円」だとこのデータ自体が示しており、桁を変えるにはAI生成のような制作コスト構造の転換か、需要起点の大量生産体制が要る。為替の面では、円安の追い風は本人の努力と無関係な外生変数であり、再現を約束しない。ジャンルの面でも、これは風景写真専門の一例であって、人物やビジネスシーンなど単価・需要構造の異なるジャンルには外挿できない。
成功譚ではなく「普通の記録」を4年分、売れ筋の内訳まで含めて公開したこと自体が、この事例の最大の価値である。参入前に見るべきは上振れ事例の夢ではなく、この中央値だ。
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出典
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